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東京地方裁判所 平成4年(ワ)1718号 判決 1993年5月25日

原告

三浦和義

被告

株式会社新潮社

右代表者代表取締役

佐藤亮一

右訴訟代理人弁護士

多賀健次郎

林國男

鳥飼重和

主文

一  被告は、原告に対し、金三〇万円及びこれに対する平成四年一月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金三〇〇万円及びこれに対する平成四年一月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、写真週刊誌に掲載された写真及び記事による肖像権侵害、プライバシー権侵害及び名誉毀損の成否が争われた事案である。

一争いのない事実等

1  被告は、書籍及び雑誌の出版等を目的とする株式会社であり、いわゆる写真週刊誌「FOCUS」(以下「フォーカス」という。)を定期的に発行している。

2  被告は、「フォーカス」平成四年一月二四日号(以下「本件週刊誌」という。)に、護送車中の原告の写真(以下「本件写真」という。)を掲載し、これと共に「“ロス疑惑”三浦和義被告の正月―民事訴訟は連戦連勝」との見出しを付した別紙のとおりの原告に関する記事(以下「本件記事」という。)を掲載し、頒布した。

3  原告は、昭和五六年八月一三日、生命保険をかけた妻一美をある女性に殺害させて保険金を騙取しようとしたが、一美を傷害したにとどまり、殺害の目的を達しなかったとの刑事被告事件(以下「殴打事件」という。)、及び同年一一月一八日、知人に一美を銃撃させ、よって昭和五七年一一月三〇日に一美を死亡するに至らしめ、さらに右保険金を騙取したとの刑事被告事件(以下「銃撃事件」という。)の被告人の立場にあり(争いがない)、本件写真撮影当時、東京拘置所に勾留されていた(顕著な事実)。

二争点

1  本件写真の掲載及び頒布は、原告の肖像権を侵害するものであるか否か。

2  本件写真の掲載及び頒布は、原告のプライバシー権を侵害するものであるか否か。

3  本件写真は、有名人であり公的存在である原告を一般道路上という公共の場所で撮影したものであること、又は原告が包括的に肖像権及びプライバシー権を放棄したことにより、肖像権侵害及びプライバシー権侵害の違法性が阻却されるか否か。

4  本件記事中の「お腹も前よりデップリして」との記述(以下「本件記述一」という。)は、原告のプライバシー権を侵害するものであるか否か。

5  本件記事中の「少しでも、貴殿にとって不利な内容が記載されていると訴訟に次ぐ訴訟。」との記述(以下「本件記述二」という。)は、原告の名誉を毀損するものであるか否か。

三争点に対する原告の主張

1  本件写真について

(1) 肖像権の侵害

被告は、本件写真の撮影及び掲載について、原告に対して一切の許諾を求めずに行ったのであるから、本件写真の掲載及び頒布は、原告の肖像権を侵害したことは明らかである。

(2) プライバシー権の侵害

① 本件写真は、私生活上の事実に関するものである。

仮に、公判廷に護送される途上にある刑事被告人たる原告が公的な側面を持っていたとしても、裁判所へ向かう護送車中で何ら公的事柄と関わっていないときは、私的領域に属する。

② 鉄格子のある護送車で、刑務官に前後をはさまれて護送されている原告を撮影した本件写真は、一般人には未知の事柄であり、檻の中の人間をとらえたものとして極めて衝撃的なものである。

③ 鉄格子の設備されている護送車に乗せられ、その前後を刑務官に看守されて護送されている姿は、一般人の感受性を基準として公開を欲するものでないことは明らかであり、原告は、本件写真の公開により、著しく不快、不安の念を覚えた。

したがって、本件写真の掲載及び頒布が原告のプライバシー権を重大に侵害するものであることは明らかである。

2  本件記述一について

本件記述一は、原告の姿態、すなわち身体的特徴を表したものであることは明らかであり、一般人の感受性を基準にして、自己の身体的特徴をこのような表現で公開されることを欲しないものであることは明白である。

したがって、本件記述一は、原告のプライバシー権を侵害するものである。

3  本件記述二について

本件記述二は、原告の民事訴訟提起の動機を著しく歪曲して記述しているものである。原告は、少なくない民事訴訟を提起して争ってはいるが、自らにとって「不利な内容が記載されている」ことを理由に争っているのではなく、掲載及び頒布された記事が虚偽の事実を報道するもので、それにより原告の社会的評価が不当に低下させられたことなどを理由に争っているのである。

本件記述二のように表現して報道すれば、一般読者に、あたかも原告が濫訴を行っているが如き印象を強烈に与えるものであり、本件記述二は、原告の名誉を毀損するものである。

四争点に対する被告の主張

1  本件写真について

(1) 肖像権侵害について

被告が、本件週刊誌に、原告に無断で撮影した本件写真を原告に無断で掲載した事実は認める。

(2) プライバシー権の侵害について

本件写真は、以下のとおり、プライバシー権侵害による不法行為の成立要件を欠くというべきである。

① 本件写真は、公判廷に護送される途上にある原告を被写体とするものであって刑事被告人という公的な事実を表現するものであること、また、公衆の目に容易にとまる一般道路を走行中の護送車中の原告を撮影したものであることから、私生活上の事実に関する写真ではなく、かつ、それらしく受け取られるおそれのある事柄に関する写真でもない。

② 本件写真は、一般人に未知の事柄ではない。

原告が殴打事件及び銃撃事件について刑事被告人の地位にあって身柄拘束を受けていることは公知の事実であり、さらに、身柄拘束を受けている刑事被告人が公判廷に行く際は護送車で運ばれることも一般人にとって常識に属する事実である。

したがって、本件写真は、右常識に属する事実を確認させるものにすぎないのであるから、一般人に未知の事柄に関するものではない。

③ 原告は、その著書や雑誌の告白記事において自己の少年時代の犯罪歴を明らかにしていること、雑誌「ブルータス」昭和六〇年一一月号に原告自身の裸体緊縛写真の撮影を許していることなどから、護送車中の写真が公開されるくらいで、不快、不安の念を覚えることはない。

(3) 有名人の法理の抗弁

有名人の法理とは、自己の業績、名声、生活方法等により公的存在となった者、又は公衆がその行為や性格に興味を持つであろう職業を選択することにより公的存在となった者は、プライバシーの権利を一部失うとする法理であるが、この法理は、肖像権にも妥当する。

原告は、殴打事件及び銃撃事件についての原告の関与を疑わせる数多くの報道(いわゆる「ロス疑惑」報道)が加熱する中で、自らテレビに出演したり、雑誌等において対談したり、告白記事等を書いたり、著作を発刊したりすることによって、日本国民で原告を知らない人のいない程度の有名人となるに至った。そして、殴打事件及び銃撃事件で逮捕、勾留、起訴された後も、自らの無実を訴えて、拘置所の中から手記や著書を発表したり、また、いわゆる「ロス疑惑」報道について名誉毀損等を理由とする多数の民事訴訟を提起するなど、現在においても原告は、有名人であり続けている。

したがって、原告が有名人として失うプライバシー権及び肖像権の範囲は極めて広いというべきであり、原告は、公的場所において社会通念上相当な方法で写真撮影され、それを公表されたとしても、それを受忍すべきである。

本件写真は、公判廷に護送される途上にある刑事被告人という地位にある原告を被写体とするものであり、その撮影場所は、公衆の目にも容易にとまる一般道路上であり、撮影方法も、私宅へ住居侵入してのぞき見的な方法を用いたのではなく、単に道路上から公道を走行中の護送車内の原告を撮影したのにすぎず、決して不当なものではなかった。

以上によれば、本件写真は、原告の肖像を違法に撮影したものではなく、かつ、本件写真の公表も違法ではない。

(4) 包括的放棄の抗弁

原告が、公衆が原告を最も注視していた逮捕直前の時期に、公表が前提となる自己の裸体緊縛写真の撮影を雑誌「ブルータス」に承諾したことは、その公表を少なくとも黙示的に承諾したというべきであり、これによって、原告は、有名人として極めて狭い範囲のプライバシー権及び肖像権をさらに自ら放棄して狭くしているというべきである。

さらに、原告が雑誌「創」に「検証“三浦報道”」と題する手記を連載し、その表題の次に原告自身の写真を掲載していることは、刑事被告人としての原告のプライバシー権及び肖像権を放棄したものというべきである。

以上によれば、原告は、包括的にプライバシー権及び肖像権を放棄していたというべきであり、本件写真の撮影及び公表も原告が包括的放棄をした範囲内にあり、原告のプライバシー権及び肖像権を侵害しない。

2  本件記述一について

本件記述一は、以下のとおり、プライバシー権侵害による不法行為の成立要件を欠くというべきである。

① たしかに、本件記述一の内容が身体的特徴に関するものであるならば、一般人の感受性を基準にして、公開を欲しないものといえる。

しかし、「特徴」とは、「他と異なって特別にめだつしるし」と定義づけられるところ、本件記述一では、現在の原告が前の原告との間で異なることを明らかにしたにすぎないのだから、「他と異なって」とは言えず、さらに「デップリして」という記載は、少し太めに見えることを表現したにとどまり、「特別めだつしるし」を表現したものではない。

したがって、本件記述一は、身体的特徴の記述には当たらず、一般人の感受性を基準として公開を欲しないものとは言えない。

② 原告は、雑誌「ブルータス」に対し、自己の裸体緊縛写真の撮影を許しているのであるから、衣服に包まれたお腹がデップリしたと表現される位で、不快、不安の念をもつことはない。

3  本件記述二について

名誉は、人に対する社会的評価であるから、名誉を毀損したというには、従来のその人に対する社会的評価が違法事実として指摘される表現によって影響を受け、従来の右評価が低下したことを要するものと解される。

従来の原告に対する社会的評価の基礎をなす重要な事実は、次のとおりである。

① 殴打事件について、昭和六二年八月七日、東京地方裁判所から懲役六年の有罪判決を受けた。

② 銃撃事件のうち、殺人罪については昭和六三年一一月一〇日に、詐欺罪については同月一九日に、起訴された。

③ 原告は、妻一美が死亡する前の昭和五七年六月、死亡直前というべき同年一一月、さらに一美の死亡後間もない昭和五八年四月一六日に、オレンジパーティーという乱交パーティーに参加した。

④ 原告は、逮捕直前の昭和六〇年九月、雑誌「ブルータス」に自己の裸体緊縛写真の撮影を承諾した。

⑤ 原告は、平成四年一月の時点で八〇件以上の名誉毀損、プライバシー権侵害等による損害賠償請求訴訟を提起している。

本件記述二は、⑤の事実に本件記事を執筆した記者の右事実に対する評価が加味されたものである。その意味では、①ないし⑤を基礎としてなされた従来の原告に対する社会的評価に対し、本件記述二は全く影響を与えないというべきである。したがって、本件記述二は、従来の原告に対する社会的評価を低下させることはなく、原告の名誉を毀損しない。

第三争点に対する判断

一争点1について

何人も、みだりに自己の容貌や姿態を撮影され、撮影された肖像写真を公表されない人格的な権利、すなわち肖像権を有している。

<書証番号略>及び弁論の全趣旨によれば、本件写真は、東京都足立区千住曙町付近の一般道路において、東京地方裁判所に向かう途上にある護送車の鉄格子のはまった窓から見える原告の上半身部分を撮影したものであり、原告が刑務官三人に前後を囲まれて窓の外を眺めながら座っている姿を撮影されている。

被告が本件写真の撮影及び本件週刊誌への掲載について原告の承諾を得ていないことは、当事者間に争いがなく、しかも、本件写真は、それが原告の容貌及び姿態を捉えたものであると容易に判明するような形で本件週刊誌に掲載されたのであるから、本件写真の掲載及び頒布が原告の肖像権を侵害することは明らかである。

二争点2について

他人に知られたくない私的な事柄をみだりに公表されないという利益については、いわゆるプライバシーの権利として一定の法的保護を与えられるべきであり、そのための要件としては、公表された事柄が、(1)私生活上の事実又は私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、(2)一般人の感受性を基準として、当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、(3)一般の人にいまだ知られていない事柄であることが必要であり、また、(4)このような事柄の公表によって当該私人が実際に不快、不安の念を覚えたことを必要とすると解するのが相当である。

前記認定のとおり、本件写真は、護送車の窓から見える原告の上半身部分を、一般道路という公共の場所において撮影したものであり、本件写真に写された原告の容貌及び姿態は、一般道路という公共の場所において公衆の目に晒されていたものであるから、私生活上の事実には当たらず、かつ、私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄にも当たらない。

したがって、本件写真の公開は、原告のプライバシー権を侵害するものではない。

三争点3について

(1)  有名人の法理の抗弁について

被告は、原告は有名人であるから本件写真につき肖像権侵害を主張できない旨主張する。

確かに、自己の業績、名声、生活方法等により公的存在となった者、又は公衆がその行為や性格に対して関心を持つであろう職業を選択することにより公的存在となった者は、公衆が関心を持つであろう相当な範囲で写真の撮影及び公表を承諾していると評価されることがあり、権利侵害を主張できないこともあるとする被告の主張は、一般論としては必ずしも妥当性を欠くものということはできない。

しかしながら、有名人といえども肖像権を有しているのであり、全面的に肖像権が保護されないわけではない。むしろ、被写体が有名人であることから、公衆が関心を持つのが相当であるとして肖像権の享受が制限される範囲は、その公的な存在及び活動に付随した範囲並びに公的な存在及び活動に対する評価を下すに必要又は有益と認められる範囲に限定されると解すべきである。

<書証番号略>、原告本人及び顕著な事実によれば、雑誌「週刊文春」が昭和五九年一月から「疑惑の銃弾」シリーズと称して殴打事件及び銃撃事件について原告を犯人とする特集記事を連続して掲載したことを発端として、右各刑事事件について原告の関与を疑わせる数多くの報道(いわゆる「ロス疑惑」報道)がされたことが認められる。したがって、原告は、被告主張の「有名人の法理」にいう有名人に直接当たるか否かはともかくとして、本件写真の掲載当時、右各刑事事件の被告人としてその名が国民一般に広く知られるところとなっており、右各刑事事件の公判の帰趨については、公共の関心事となっていたことが認められる。

しかしながら、本件写真は、護送中の原告の容貌及び姿態を撮影したものであり、未決勾留中の原告の近況を伝えるものにすぎず、右各刑事事件の帰趨には全く関係のないものである。したがって、たとえ原告が有名人に当たるとしても、公衆が関心を持つであろう相当な範囲、すなわち右各刑事事件の帰趨に対する評価を下すに必要又は有益と認められる範囲には属さないというべきである。

したがって、原告が有名人であることを理由とする被告の抗弁は理由がない。

(2)  包括的放棄の抗弁

たしかに、<書証番号略>及び原告本人によれば、雑誌「ブルータス」昭和六〇年一一月号に原告の裸体緊縛写真が掲載され、原告は、右写真の撮影については承諾していたことが認められる。また、<書証番号略>及び原告本人によれば、雑誌「創」に昭和六三年四月ころまで一六回にわたって連載された「検証“三浦報道”」と題する原告の手記には、表題の横に原告の肖像写真が掲載されており、原告は、右写真の掲載を黙示的に承諾していたことが認められる。

しかしながら、右各写真の撮影又は掲載に対する原告の承諾は、右各写真に関する限りにおいて有効なものであって、右事実のみから、本件写真の撮影及び公表当時、原告が包括的に肖像権を放棄していたものと推認することはできない。

したがって、被告の包括的放棄の抗弁には理由がない。

四争点4について

本件記述一は、身体のうち通常衣服をまとっている腹部について描写し、原告が以前に比べて太ったことを表現したものである。このような個人の容姿に関する情報は、当該個人の周囲にいる者には客観的に明らかではあるが、一般の第三者にとっては未知の事柄であり、周囲にいる者以外の一般の第三者には知られたくないと欲することは、決して不合理なことではない。プライバシー権は、自己に関連する情報の伝播を一定限度にコントロールすることを保障することも、その一つの内容とするものと解され、そのような観点からすると、本件記述一のような個人の容姿に関する情報も、私生活上の事実としての性格を有するものと解される。

そして、原告本人によれば、原告は、本件記述一によって不快感を抱いたことが認められる。たしかに、前記認定のとおり、原告は、雑誌「ブルータス」に対し、自己の裸体緊縛写真の撮影を承諾しているが、原告が以前に自己の裸体写真の撮影を承諾していたからといって、衣服に包まれた腹部について「デップリ」したと侮辱的な表現をされていることについて不快、不安の念を抱くことがないということはいえない。

したがって、本件記述一に含まれている原告の容姿に関する情報を、みだりに公表することは、原告のプライバシー権を侵害する違法な行為である。

五争点5について

原告は、本件記述二が、一般読者に対し、原告が濫訴を行っているかのような印象を与えるものであって、原告の名誉を毀損するものであると主張する。

たしかに、本件記述二が、一般読者に対し、原告が根拠が乏しく非難されるような多数の訴訟提起を行っていることを印象付けるものであれば、原告の社会的評価の低下をもたらすものであるといえる。

しかし、記事の内容が人の名誉を毀損するかどうかについては、その記事の一部だけを取り出して個別に判断すべきものではなく、一般の読者がその記事を読んだ際に、当該記事全体から通常受けると思われる印象に従って判断すべきものと解するのが相当である。そして、<書証番号略>によれば、本件記事には、「民事訴訟は連戦連勝」との見出しが付されており、本件記述二に続いて「その数は五〇件以上にも上り、それだけでも仰天しますが、さらに驚くべきはそれらに連戦連勝ということです。」との記載があることが認められる。したがって、本件記述二は、原告の多数の民事訴訟の提起を揶揄するかのような表現を用いてはいるが、本件記事全体を読んだ一般読者は、原告が提起している数多くの民事訴訟ではいずれも原告の主張が認められて原告が勝訴しているという印象を受け、原告が濫訴を行っているとの印象を受けることはないものと認められる。

したがって、本件記述二によって、原告の名誉が毀損されたとする原告の主張は、理由がない。

六損害について

本件写真の掲載は、原告の肖像権を侵害するものであり、原告本人によれば、被告が本件写真を保存が可能な形で本件週刊誌に掲載し不特定多数の者に頒布したことによって、原告は、屈辱感、羞恥感等の精神的苦痛を被ったことが認められる。また、本件記述一は、原告のプライバシー権を侵害するものであり、原告本人によれば、原告はこれにより不快感を受けたことが認められるが、その内容を考慮すると、プライバシー侵害の程度は軽微なものと推認される。

以上を総合すると、被告の右不法行為により原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料額は、金三〇万円をもって相当する。

第四結論

以上によれば、本訴請求は、不法行為による損害賠償として金三〇万円及びこれに対する本件写真及び本件記事が掲載、頒布された後である平成四年一月二四日(本件週刊誌は、平成四年一月二四日号であることからみて、同月二三日以前に発表されたものと認められる。)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官近藤崇晴 裁判官伊勢素子 裁判官野山宏は、転補のため、署名押印することができない。裁判長裁判官近藤崇晴)

別紙<省略>

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